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異文化適応とキャリアの葛藤 ー自分の核を変えずにスイッチを切り替える方法

更新日:7月28日


Rumi Hasegawa, interkulturelle Trainerin und Coach

先週、私はドイツ人のビジネスパートナーとの会議で、あえて相手の話が終わる前に質問や自分の見解を投げ込んでみました。日本式の「最後まで聴く」というスイッチを一時的にオフにしたのです。結果は、驚くほどダイナミックで実りある議論になりました。


これは、私が自分を「変えた」わけではありません。自分のスイッチを切り替えただけなのです。


この「スイッチの切り替え」ができるようになるまで、私には長い葛藤がありました。


ドイツや欧米に住む日本人であれば誰もが直面する悩み——「自己主張」。会議で意見を言わなければ「存在しない」と見なされる環境で、日本の「最後まで聴く」という美徳は、ときに足かせに感じられます。自己主張を学ぶということは、これまでの自分のOSを捨てることなのだろうか、と。


答えは、Noです。


私はこれまで、日本とドイツ、そして外務省(官)と企業(民)という、4つの異なる世界を行き来してきました。それぞれの世界には、パソコンに例えるなら、独自のOS(オペレーションシステム)が存在します。


外交の世界では、一言の重みが極めて大きく、時間をかけて一つのフレーズについて当局間で交渉し、「第三の道」を見出しながら合意形成することが求められます。一方、ビジネスの世界では、スピードと効率を重視し、顧客のニーズに応え、利益を出さなければなりません。


かつての私は、新しい環境に移るたびに、自分のOSを新しいものに「上書き」しなければならないと思い込んでいました。しかし、それは間違いでした。


外交で培った多様なステークホルダー間の調整力や交渉力は、ビジネスの現場でも活きます。文化の細かいニュアンスを感じ取る力は、そのまま顧客対応という最前線で使えるのです。


つまり、必要なのは「AかBか」という二者択一ではなく、それぞれの世界から何を学び、自分の「引き出し」として蓄えていくか、という発想です。自分を丸ごと変える必要はありません。


一つの「行動」を変えるだけなら、今日からでも始められます。小さな行動の変化が、やがて一つの引き出しになり、いつか必ず自分を助けてくれます。


私は今でも、相手を尊重し最後まで聴く、調和を重んじるという「日本のOS」を大切にしています。それは私の核であり続けるでしょう。ただ、状況に応じて別の引き出しを開ける術を身につけた——それだけのことなのです。


キャリアを積むということは、古い自分を捨てて新しい自分にアップデートし続けることではありません。過去の経験——私にとっては外交や日本での学び——は、決して消えることのない財産です。


そこに新しい文化や環境での学びを「追加」していくことで、私たちの引き出しはどんどん増え、より豊かな解決策を導き出せるようになると信じています。


そして今、私は5つ目の世界への挑戦を始めています。異文化理解の研修講師・コーチとして、これまで4つの世界で蓄えてきた引き出しのすべてを——外交の調整力、ビジネスのスピード感、日本の細やかさ、ドイツの自律性——を、目の前のクライアントのために開けていく仕事です。


企業向けには、異なる文化背景を持つチーム内のコミュニケーションの軋轢をほぐし、二国間プロジェクトを円滑に進めるための伴走を。個人向けには、異文化環境での葛藤やキャリアの岐路に立つ方の「次の一歩」を、一緒に整理するコーチングを。


この5つ目のOSは、これまでのどのOSとも違います。でも、これまでのすべてのOSが、ここで生きている。そう実感できる日々です。


※本記事は、7月15日の日独産業協会でのウェビナーでの講演を基に執筆しました。


 
 
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